日本は不均衡開発のツケをどう解消するのか?
 江戸時代初期と比較すると、現在の人口は約10倍。一様に人口が増えたのかと思いきや、当時より減っている地域もあるということです。
 人口が増えているのは三大都市周辺のようで、戦後の都市開発がこれを助長していることはほぼ間違いありません。逆に、減っているのは日本海側が多いようです。近代化に際してバランスを欠いた開発が行われてきたことは、分析をされた谷口氏も指摘しています。

 このような背景を考慮して、ここから先は近未来SFの話をしてみましょう。

 世界規模で起こった災害や気候変動。某国の開発暴走による取り返しのつかない環境破壊。このような激変が起こったことにより、日本は海上の孤立国になってしまいました。食料の6割、エネルギーの96%を海外に頼っていため、いきなり死活問題に直面しました。
 数年前から持続可能な社会の見直しや国内の環境保全型農業などに注目が集まっていましたが、海外からの「輸入の洪水」には太刀打ちできず、また、政治的な圧力も重なり、あまりパッとした動きにはなっていません。しかし、世界的激変によって、国内の生産力を見直さざるを得なくなりました。
 流通業者がこぞって野菜を買いに来ます。収量を上げさせるため、肥料の投入と栽培技術の向上を促し、「農業の工業化」を進めようとします。個人単位で直接買い付けにくる都市住民もおり、農産物泥棒も社会問題化してきました。
 しかし、農業地域では持続的な生産を維持することを選択しました。政治経済の圧力に屈せず、無言の抵抗を続けます。農地の潜在力を最大限に引き出して農業を進めますが、それ以上の負荷をかけないことに配慮しました。農業は生命の循環をつくる産業であることを大前提に、黙々と地道な作業をこなしていきます。
 輸入ストップと農業生産力の限界により、暮らしていくことのできる人口が明確になりつつあります。日本の人口1億人に対し、扶養可能なのは5分の1に相当する2千万人。
 その時、都市が取った行動は...?さらに、農山村が示した提案は...?

 <続く・・・>(多分)



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人口集中『石高』で点検 江戸時代の循環型社会を基準にすれば・・・

 日本国内の各地域で、環境に影響を与えずにどれだけの人間が暮らしていけるか-。江戸時代に大名や農民などに対する租税の単位として用いられた「石高」の記録を基に、これを試算したユニークな研究結果を、岡山大の谷口守教授らのグループがまとめた。
 算出した「持続可能な居住人口」と現在の人口とを比べると、現在の人口が大幅に多い地域がある反面、少ない地域もあることが判明。谷口教授は「日本の近代化に、地域間のバランスを欠いた開発が行われてきたことを示している」と指摘する。

土地の価値で決定
 石高制は、豊臣秀吉が行った検地で完成した米などの現物徴収による租税制度。大名や武士、農民などからの年貢の量は、農業生産力に換算された土地の価値に基づいて決められた。
 「石高」は江戸幕府が各藩を統治する基盤となり、19世紀末の明治時代の地租改正まで続いた。「石」は尺貫法による容積の単位で、約180リットルに相当。一般に1石の米で1人の人間が1年間暮らせるとされる。

現在の人口と比較
 谷口教授らは、江戸初期に行政や商業都市として栄えた東京や大阪などを除くと、当時は貧しいながらも、農業中心に環境負荷が低い循環型社会が各地で成立していたことに着目。北海道や東北地方の一部などを除く全国87藩の1664年時点の石高記録に基づいて、各地域の持続可能な人口を推計し、現在の人口と比較した。
 両者の格差は、特に太平洋沿岸の三大都市圏周辺の地方都市で大きかった。現在の人口が最も過大だったのは埼玉県川越市周辺で7.7倍。兵庫県明石市(6.8倍)、大阪府岸和田市(5.4倍)、神奈川県小田原市(5.1倍)、名古屋市(5倍)と続いた。
 一方、農業地域では、本来その土地が支えられる人口よりも、現在の人口の方が少ないことが分かった。最も少ない新潟県村上市や新発田市、滋賀県彦根市周辺では半分以下。大分県竹田市や浜田市、福井市なども0.6-0.7倍と低かった。
 国内最高の100万石もの生産力を誇った加賀藩(現在の金沢市周辺)は、格差が1.1倍で、谷口教授は「人口分布だけから見れば、無理のない開発がなされてきたと言えそうだ」と評価する。

持続可能性を探る
 約340年前に比べると農業技術も向上し、当時よりも多くの人が同じ土地に住めるようになっているのも事実だ。ただ、食料の多くを輸入に頼る日本では、そうした技術革新でも追いつかないほどの人口集中が起きており、国内外からの食糧輸送や、通勤通学に必要な交通量の増加、ごみやし尿処理などの環境への影響が増大している。
 谷口教授は「持続可能な居住人口と現在人口の格差は、人間活動が環境に与える負荷の大きさとも言える。日本は戦後、一丸になって三大都市圏に偏った資本整備を進めてきた。今こそ従来の開発の在り方を見直す時期だ」としている。

(2006年2月1日 中国新聞)
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by senang | 2006-02-17 19:58 | 【0】センシブルワールド
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