人間性の劣化 -自滅への道-
 「ウサギ虐待死」の記事を目にして大きな不快感と怒りを覚えた方が多いと思います。ウサギをさらって蹴り殺した者が極刑になっても、「目には目を」ということで納得される方も多いでしょう。しかし、それだけで済むものではなく、根本的な問題は別のところにあります。人間社会そのものにほころびがあること、人間社会そのものが危機的状況にあることを我々は認識しなければなりません。
 まず、社会側の問題を挙げるとすれば、命を同列に扱っていないところにあります。今回の犯人の罪は「動物愛護法違反」。命を陵辱しておいて「違反」で済むのが今の世の中なんですね。
 次に、人間性の問題としては、我々の社会はこのような者の発生を許すバックボーンを有しているということです。3人を処罰するだけではなく、根元を見直さなければなりません。

 この事件は、理屈ではなく、本能部分に訴えかけてくるものがあります。それを端的に表した言葉がありますので紹介いたします。

 「人間以外の生命の軽視は、他人の生命(生存権)を軽視する情感へと繋がりかねない。つまりそれはヒューマニズム崩壊への危険を潜めている。」(前後の文章は下記参照)

 「ヒューマニズム崩壊」というマイルドな表現をされていますが、言い換えれば、今回の行為は「人間(社会)の自滅」の可能性を高めてしまったことになります。その道を避けるためには、人間のあり方をもっと真剣に考えなければなりません。

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<ウサギ虐待死>18歳の3人逮捕 ボール代わりにける
 [ 02月15日 12時43分 ]


 小学校で飼育していたウサギをサッカーボール代わりにけって殺したとして、警視庁少年事件課は15日、いずれも東京都江東区に住む18歳の無職少年3人を動物愛護法違反などの容疑で逮捕したと発表した。
 調べでは、3人は昨年5月8日早朝、同区辰巳の区立辰巳小に侵入し、ウサギ小屋からオスのウサギ1羽を盗んだ。さらに近くの公園で約1時間にわたってけるなどの虐待をし、死なせた疑い。「おもしろくてエスカレートしてしまった。死がいは近くの運河に捨てた」と供述している。
 3人のうち2人は同小の卒業生だった。ウサギは「ゆきのすけ」と名付けて児童らが4年前から世話をしていた。行方が分からなくなると、近所に張り紙をして捜していたという。同校の並木明校長は「あまりにかわいそうで、児童たちには話していなかった」と話している。【合田月美】

(毎日新聞)
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守山弘著「自然を守るとはどういうことか」(社)農山漁村文化協会

 遺存的な生物は豊かな人間生活を過ごせる社会の指標になると私は述べた。この問題を考えるにあたって、私は大阪大学の林智氏の報告「ヒューマニズムと『動物・植物の生存権』」を参考にしたい。(略)
 「動物・植物の生命を大切にしなければならない理由は、次の2点に集約される。
 (1) 人間以外の生命をないがしろにすると『全システムとしての生態系』が乱される。すなわち人間生存の生物学的な基盤が崩される心配がある。
 (2) 人間は単なる肉体の存在ではない。それは精神的・情緒的・文化的側面を持っている。人間以外の生命の軽視は、他人の生命(生存権)を軽視する情感へと繋がりかねない。つまりそれはヒューマニズム崩壊への危険を潜めている。」
(略)
 林氏は(2)についてつぎのように説明している。
 「人体という物質系が、進化の果てに獲得した最も驚くべき機能は、精神的・情緒的・文化的なそれであろう。この働きが言語と文字を生み、その結果、独特の『環境に対する態度(文明)』と『人間社会』とを発達させたのである。このような人間にとっては、明らかに『動物愛』は『人間愛』の情緒的アナロジーであり得る。擬人法という文学上の手法の極めて一般的であることが、これを物語るといってよい。分かり易く言えば、もし『生命虐待』を『動物虐待』によってトレーニングすると、遂には『人間虐待』を平気でやってのけられるような人格が形成されてしまう恐れがある。」
(254~255ページ)

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by senang | 2006-02-15 17:24 | 【0】センシブルワールド
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