野蛮人はどっちだ!?
 30年前に書かれた古い本ですが、開発途上国での人口増加はヨーロッパ人(キリスト教)によって引き起こされたという内容のものを見つけました。古くても大航海時代以降のことでしょうから、おおむね18世紀以降のことだと思います。
 確かに、開発途上国はずっと前から慢性的に貧困に悩まされていたという話を聞いたことがありません。貧困は、戦乱や経済難民化(という言葉があるかどうかわかりませんが)などによって、近代以降に顕在化してきた問題だという印象が強いです。
 ヨーロッパ社会の拡大によってもたらされた布教や侵略が、先住民族に文化的攪乱をもたらしたことは確実でしょう。そして、そのことが民族や部族が守り続けてきた存続の持続性を揺るがし、ひいては人口増加と環境負荷の増加に連結しているとすれば、開発途上国における破壊行為について新しい見解を持たなければなりません。

 すなわち、「野蛮人はどっちだ」ということです。

 下記の記述によると、先住民族の慣習は必ずしも良いものではないという批判はぬぐい去ることができません。でも、それらは民族と環境の持続性を担保する知恵であるという見方もできます。
 先住民族の慣習の善し悪しはともかく、問題なのは、キリスト教的価値観がそれらを一掃してしまったというわけです。良かれと思ってやったことかもしれませんが、自分たちの価値観や文化を押しつけたことに他なりません。そして、その結果として人口増加を招きました。そして、いくつかの地域では、人口増加が森林をはじめとした環境破壊を誘発してしまいました。

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 以下は文献からの引用です。あちらこちらから抜き出していたら長くなってしまいましたので、お時間のある時にどうぞ。

Richard G. Wilkinson 著「経済発展の生態学 -貧困と進歩-」筑摩書房
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 ヨーロッパ人たちとの接触、外来の価値および習慣との接触の結果、かつては過剰人口を防ぐのに与って力があった堕胎、嬰児殺しのような習慣が放棄された。早くも18世紀の半ばに、パラグァイの宣教師は、キリスト教がアビポン(Abipones)族の間で行われていた堕胎、および嬰児殺しを廃止させたと述べている。皮肉なことに、その同じ宣教師はまた食糧がいかに豊富であったかということを述べ、その事実がこうした習慣の存在とは無関係であるかのように述べている。
(49ページ)

 たぶん、われわれが知っているのは、社会が現に土地に対する人口圧力に苦しんでいること、またその地域にヨーロッパの影響が大きくなるとただちに人口が増加し始めた、ということぐらいである。しかしながら、多くの社会にはそれらがかつては均衡状態で存在し、それが現在はいろいろな方向で攪乱されているのだという明らかな証拠がある。その社会が生態系の均衡から逸脱すると生計維持が問題となり、経済的状況は悪化し、社会はそれぞれみな危機の高まりを示している多数の難問に直面しているのに気づくようになる。
(80ページ)

 ズールー族の社会慣習に対してヨーロッパ人、キリスト教が干渉(たとえば、伝統的な一夫多妻婚は、キリスト教的な一夫一婦婚に代わっている)したために、人口は増加し、資源に対する圧迫が増加した。
(83~84ページ)

 「人口問題の反映として、避妊、独身生活、嬰児殺しがティコピア族によって意識的に行われている」とファースは述べている。しっかりした人々は子供を二人しかもたないと考えられていたし、それ以上いる家族では長男と長女だけが結婚するものと考えられていた。しかし、1929年以前の10年間のキリスト教の影響は、すでに人口増加を刺激し始めていた。(略)1952年までに、人口増加に対する伝統的な抑制法の大部分はなくなっていた。人々は以前よりも多くの子供を持ち、すべてが結婚するようになった。こうした状況は、とくにキリスト教徒ではない長老によって、「先見の明のなさ」と「責任感がうすれた」ことの結果であるとみなされた。
(88~89ページ)

 ヨーロッパ人とヴナマミ族との所有権、土地利用にかんする考え方が違っていたために争いが起きたが、1896年に、ヴナマミ族が所有権を保持したければ、向う50年間彼らの土地に定住し耕作しなければいけないというヨーロッパ式の法律が制定された。族長のイニシアティヴのもとにヴナマミ族は人口を増加させ、係争地にココナッツを栽培するという意識的な政策をとり始めた。
(91ページ)

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by senang | 2006-01-20 15:53 | 【0】センシブルワールド
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