地球のリズムに同調した施策展開は可能か?
 久々に嬉しくなるような行政マンがいました。島根県地域振興部長藤原義光氏。今は一時的な闘病中で年末年始も病院で過ごしたとのこと。入院中はたいそう暇らしく、書き物などして過ごしていらっしゃったようです。年明けにそれを入手いたしました。

「新たな国家ビジョンとして踏まえるべき点(地方の視点から)」

 タイトルに掲げている論点として、次の5つを挙げています。
  (1)少子・高齢化社会への対応
  (2)地球環境保全など環境負荷の少ない社会
  (3)都市と地方の共生
  (4)現代社会が抱え込んだ社会病理の根元的解決
  (5)中山間(多自然居住)地域が持つ特性

 そこから目をひいたものを紹介しましょう。
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 都市機能や都市生活は食料、水、エネルギーを始め、ほぼ全ての物資(エネルギーも物資である)を地区外の生産と地区外からの搬入に依存してはじめて成立している。(略)都市機能と地方定住のベスト・ミックスにより環境負荷の少ない社会を目指す必要がある。地方分散の利点は、過密によって地球の自浄作用の限界を超えてしまった都市地域における自浄作用の機能不全を解消する可能性もある。
(「(2)地球環境保全など環境負荷の少ない社会」より)

 地方を含めた文化・経済・社会的均質性・均衡は放棄し、食糧・エネルギーの安心・安全は犠牲にしてでも経済効率を追求しようとするこうした視点が果たして長期的に見た我が国の取るべき道であろうか。それに代わる一つの論点として「文化の厚み、広がり、伝統性、継続性」をあげたい。
 (略)都市機能を都市住民と田舎住民がともに享受し、田舎の良さを在住者と都市住民がともに認知しともに楽しむ。そうした予定調和を求めていきたい。
 それが牧歌的、自然宗教的であるとするならそれを布教する新宗派を創設したい思いである。
(「(3)都市と地方の共生」より)

 現代都市社会においては、自然環境(すなわち生命の息づく場、自然界としての生命)、その恵みをいただく営みとしての生産と、それを消費する生活が大きく分離・乖離してきた。
 確かに、衣食住の消費生活の上では金を出せば何でも手に入らないものはない。テレビは、高級店で有名シェフの料理を食する番組や高級サロンでの1瓶  100万円のブランディのキープを放映したりする。テレビの力は強力なパワーで劇場型社会といわれる社会をつくり出した。そこに映し出される社会は、まさしく都市そのものである。(勿論、時にはアフリカのサバンナや南米のアマゾンを映しもするが、それは百科事典的な取り上げ方としてである。)
 (略)生産イコール生命を殺すことであり、消費はそうした生命をいただくことであることを教える食育が提唱され出した。我々が生命を維持するのは他の生命をいただくことによって初めて成り立つことを知った子ども達は給食の食べ残しが皆無に近くなるという。
 (略)フリーターやニートの増加は、我々がこうした自然や環境に配慮をなくした社会を作ってしまったことに対する無意識的なレジスタンスだという意見も肯ける。
(「(4)現代社会が抱え込んだ社会病理の根元的解決」より)

 中山間地域は平成10年策定の新全国総合開発計画(5全総)では地方中小都市を含め多自然居住地域とされた。こうした地域は、自然界としての生命、その恵みをいただく営みとしての生産、それらを享受する生活の3つの「生」が混然と一体的に融合した「人(ヒト)としての活動」の原郷といえよう。そこは、都市が見失った日本文化の源泉であり、島根県の例で示したとおりの特色ある歴史・文化を有している。
 住や交流によりこの地に身をおくライフ・スタイルが、これまでやや独善的に述べてきたとおり、現代社会が抱える病理現象の解決への糸口となりうるものと考える。
(「(5)中山間(多自然居住)地域が持つ特性」より)
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 この方の視点や問題意識は、行政マンらしからぬとさえ言えます。しかも、県政のNo.3に位置する方なので、施策への影響力は大きく直接的であると言えるでしょう。
 今のところ、これらを体現する施策として具体的に展開されているのは、団塊の世代の退職(2007年問題)を見越したUIターン者の受け入れ、田舎ツーリズムをはじめとする都市交流などです。せっかく「生命・生産・生活の3つの『生』」を提唱していらっしゃるので、これに基づく大戦略を打ち立てるべきだと思います。ここは1つ腹をくくって、余剰資源の輸出と移住者の受け入れはOK、外部資源の輸入はNGというような鎖国を展開し、自給・自立を標榜してもよいでしょう。島根県ならそれができます。

 近々、お見舞いに行ってみようかなぁと思いました。
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by senang | 2006-01-06 21:54 | 【0】センシブルワールド
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