「人間・森林系の経済学 人間にとって自然とは何か」
 この連休中、村尾行一著「人間・森林系の経済学 人間にとって自然とは何か」を読んでいました。特に思うところあってというわけでもなく、どちらかと言えば、何となくというか、思い出したかのように古書を鞄に詰めて出かけた次第です。
 村尾氏の理論は、人と自然との関わりに関して、最近の養老孟司氏が唱えているような論調とかなり重複しています。ただし、村尾氏が本書を出版したのは今から20年以上前の1983年。さらに、村尾氏は林学(林政学)界出身の研究者ですが、当時、大多数の同業者(研究者)は村尾氏の理論にほとんど興味を示していませんでした。
 この人、20年早かったわけです。世が世なら・・・と、思わずにはいられません。

 僕がつたない感想を述べるより、重要な点を本文から以下に抜き書きします。これとて、さわりの部分でしかありませんが・・・

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 だから、私はいまこそ、森を造り育て、それを利用する営みを<経済の世界>に引きもどすべきだと思う。そうしてはじめて、「緑」が平和のシンボルたりえ、森林が国民の実生活と国土を守り支えうるのである。
 ことはドロドロとした生臭いレベルの問題であり、端的にいって「緑化」を経済的に支える仕組み、それを推進する生活的動因が形成されることが肝腎なのである。有閑マダムの一人よがりの慈善活動のようなものでは<現実>にはねとばされる。「草刈り十字軍運動」に対して私が反対はしないが、共鳴も感心もしない所以は-「十字軍」という呼称の先示したマンガ性を措くとしても-ここにある。ことは“精神運動”の次元ではない。
(18ページ)

 食糧飼料から各種加工原料までを短い生産期間で供給する農業を林内で営ませ、しかもこの農業によって育林作業を代行させる混農林業=「アグロフォレストリー」が切り札となる。だからFAO等国際的な農林業機関はつとにこれの実行化を強く提唱してきている。しかし、こうして提唱されている「アグロフォレストリー」なる概念が、いまのところまだ“哲学”としての域をあまり出ていない。
 ところが日本は、「アグロフォレストリー」を実践可能なものとして具体的に提示することのできる、先進国の数少ない一例である。
 というのは、「アグロフォレストリー」を、「混農林業」といった類いの生硬な訳語ではなく、常用日本語に置きかえてみれば、要するにそれは木場作りであり焼畑林業だからである。
(26ページ)

 だが本来、植物には自己栄養力・環境対応力が立派にある。だから、植物である作物も、今のような濃厚保育をしなくとも、それ自身が内有している生命力を健全に、素直に発揮させてやれば、立派に育つのではないか。
(30~31ページ)

 一括大量生産・大型機械の投入等は、伐採作業の能率を向上させる。しかし、伐採作業を、時間的にも場所的にも分散的な少量生産として行わねばならぬ。機械も、したがって小型のほうがよいことが多く、場合によっては昔ながらの人力自然力作業の方が便利・合理的なことがある。
 生産の機械化・大規模化に適合した作業条件をつくりあげることが合理的ではある。だが林業では、あくまでヤマに機械をあわせるべきであって、機械にヤマをあわせてはいけない等々。
(41ページ)

 生態系内では対立、抗争、相互破壊が渦巻いている。破壊が一度かぎりのものではなく、絶えず継続されうるような-それが生命・生存というもの、換言すると繰り返しの死が「生」で、一回かぎりの死が「死」なのだといえようが-緊張した動態的な均衡関係のアンサンブルが生態系だといってよい。したがって生態系は当然、変化する。
(54ページ)

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 村尾氏の論は、これから僕が行動しようとしていること、実践しようとしていることの規範になり得るものがあります。当然、上記の点にとどまりません。他には、土の形成過程とその重要性(代替がきかない)を意識すること、普遍的モデルを当てはめるのではなく現場主義・個別対応が最終的には重要であることをはじめ、過去には山の手入れや焼畑などの具体的な実践方法も示してくれました。
 何より、村尾氏が唱える焼畑林業の復権は「もやし隊」の礎と言えます。思い起こせば14年前、村尾氏は「山なんて焼いちゃえばいいんだよ」と言っていました。その一言は色あせるどころか、今さらながらますます新鮮に感じられます。今思えば、あの言葉に共鳴してしまったからこそ、今の僕があるのかもしれません。
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by senang | 2005-12-25 22:26 | 【0】センシブルワールド
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